尿路感染症の効果的な管理:
看護師の役割

神経因性膀胱機能障害のある患者さんにとって、尿路感染症(UTI)は依然として重大な問題です。本稿では、この患者集団が UTI を認識、管理、予防できるよう支援する際に看護師が果たせる役割に焦点を置きます。

UTI はなお重大な医療上の関心事

神経因性膀胱機能障害の患者さんの治療は大きく進歩しているものの、UTI は依然として重大な問題です。脊髄損傷患者を調査した米国のある研究(2017 年)によれば、UTI は 1 年目に最も多い合併症であり、患者は年に 4 回以上 UTI を発症していました 1。既存のデータでも、UTI が SCI 利用の患者に限った症状ではないことが示されています 2

教育が極めて重要

医療従事者は UTI を管理しようとする際、大きな課題に直面します。「我々はリスク因子を管理して、ISC の実施方法について患者さんを教育することで、UTI が進行するリスクの抑制に努める一方で、これらの患者さんに対する抗生物質の使用量を減らすよう努め、感染症が起きた場合には適切な抗生物質を選択する必要があります」とピア・デニス教授は説明します。

このように相反した課題を両立させるには、臨床現場だけでなく地域社会においても患者さんのケアに携わる幅広い人々を活用すべきです。デニス教授によれば、一般開業医と介護者のいずれにも、さらなる教育が必要です。患者さんが病院で教わった手法を自宅でも実践できるようにするため、患者さんの教育は一貫性があり、日常生活に即したものでなければなりません。また、患者さんの教育では必ず、長期的なアドヒアランスを重視します。「実用的であるべきです」とデニス教授は言います。「患者さんは 30 年~40 年にわたり ISC をすることになります。患者さんが長期的に治療を受け入れて指示を遵守できるように、簡潔にすべきです。」これらの課題は分野横断的に取り組む必要があり、ここで看護師が中心的な役割を果たします。

「UTI について教育を受けていないと、間欠自己導尿の失敗につながるでしょう。そうなれば、患者さんはこの治療法の恩恵を十分に受けられなくなります。」
ピア・デニス教授

UTI 予防のガイドラインと規則

UTI を予防するには、患者さんが ISC の優れた手法を学び、UTI 予防のために従うべき規則を理解することが重要です。看護師は UTI 予防のガイドラインを忠実に守った場合の好例を示すことができます。「患者さんは人それぞれですが、だからと言って規則がない訳ではありません」とデニス教授は説明します。
「規則があり、場合によっては患者さんのニーズに合わせて調整します」

ISC を行う患者さんの場合、次の 4 つの分野が UTI 予防の鍵となります。

  • 頻度:過膨張や膀胱内の尿や細菌の蓄積を避けるため、長期間にわたって十分な頻度で ISC を実施する必要があります。推奨される頻度は 1 日 5 回以上で、1 回の排尿量の目標量は尿 500 ミリリットル未満です。
  • 利尿:1 日の排尿量の目標は 1.5 リットルですが、患者さんが日々の生活に合わせて利尿をするうえで排尿/排尿日記が役立ちます。
  • 手法:適切かつ完全に排尿するためには、正確な手法が重要です。
  • 便秘:便秘の場合は適切な治療を受けなければなりません。ある研究 3 では、便秘の治療に経肛門的洗腸療法(TAI)を導入すると、この患者集団の UTI 発症率が 50%超低下することが分かっています。

UTI の診断と治療における看護師の役割

  • 十分な臨床検査
    UTI を診断する前に、必ず十分な臨床検査を実施すべきです。患者さんに何も症状が見られない場合、尿培養は不要です。しかし症状がある場合は、抗生物質を処方する前に必ず尿培養検査を指示すべきであり、尿を蓄尿バッグから採取してはなりません。

  • 抗生物質の適正な使用
    抗生物質は、実際に感染がある場合にのみ処方することが極めて重要です。患者さんから混濁尿を申告された場合、まずは水分摂取量を増やすよう指示し、それによって尿がどうなるかを監視すべきです。また、抗生物質の投与終了後に尿培養を行わないことも重要です。

    コロプラストのイベント「Continence Days」で、デニス教授が感染症管理における看護師の役割について行ったプレゼンテーションをご覧になりたい方は、コロプラストの担当者まで閲覧方法をお問い合わせください。