MENTORツールは、脊髄損傷患者さんで検証された排便治療のアセスメントツールです。
MENTORツールは、MENTOR質問票とMENTORホイールで構成されています。
1. MENTOR質問票の12の問いに答えてもらい、回答を記入します。
2. MENTOR質問票の1、2、3 の項目の結果をホイールのステップに沿って進めていきます。その結果、色分けされたMENTORの評価が表れます。
3. 3色の色分けによって、現在の治療の見直しが必要かどうか、個別の患者に応じたアセスメントを導きます。
MENTORツールの使い方
MENTORツールの使い方については、こちらの動画をご覧ください。
MENTORツール開発の背景
脊髄損傷(SCI)患者さんの最大80%が神経因性大腸機能障害(NBD)を抱えていることが報告されています。1
NBDスコアは、排便機能を評価するために脊髄損傷患者さんにおいて検証されたツールであり、その結果はQOLとの相関を示しますが、臨床的な判断を行うために開発されたものではありません。2
国際的な専門家グループは、NBD治療のモニタリングとアセスメントを促進するために、MENTORツールを開発及び検証を行いました。
このツールは、客観的な腸スコア測定値(NBDスコア)、患者の腸機能に対する主観的な認識、および特別な注意の症状という3つの次元の質問票に基づいています。 これにより、SCI患者の全体的な評価が可能になります。
MENTORツールは、NBDスコア、患者さんの主観的な満足度、および特別に注意を要する症状の3つの主要な側面から評価を行います。 これにより、脊髄損傷患者さんの排便治療に関して、包括的な評価が可能になります。
6か国241名の脊髄損傷患者さんを対象にした国際的な検証研究では、MENTORツールの評価は、専門医の意見と全体的に79%が一致していることが示されました。 さらに、MENTOR質問票の記入にかかった時間(中央値)は5分であり、参加者の97%が「わかりやすかった」と評価しました。1
本ツールの有効性を検証することを目的に、兵庫県立リハビリテーション中央病院において、盲検下で前向き観察研究が行われました。
主要評価項目は、本ツールとNBD治療に関する専門医の評価が一致することでした。副次評価項目は、患者におけるツールの理解と使いやすさです。
合計60名の被験者が参加し、60名が質問票に対して回答しました。
「MENTORツール」が示した結果の分布から、大半の患者さんが治療の変更を検討すべき(45%)か、または治療を変更すべき(30%)結果となりました。
主要評価項目に関しては、黄色のDiscuss(48%)と赤色のAct(61%)で本ツールの結果と専門医の評価の一致率が低く、緑色のMonitorでは高い一致率(100%)を示し、全体的な一致率は65%でした(国際的な検証結果では(62%)。
「MENTOR ツール」における3 つの側面の結果は、いずれも治療の変更を推奨することと関連することが示されました。
副次評価項目に関しては、質問票への平均所要記入時間は4.1分であり、被験者の方の97%が容易に記入することができると回答しました。
また、デンマークにおいて、在宅療養を行う脊髄損傷患者さんを対象に、MENTORツールの結果分布を明らかにすることと、その結果分布と患者さんの日常生活状況との関連を明らかにすることを目的とした研究結果が報告されています。
参照リスト:
1. Emmanuel, A. et al. Creation, and validation of a new tool for the monitoring efficacy of neurogenic bowel dysfunction
treatment on the response: the MENTOR tool. Spinal Cord (2020). DOI:10.1038/s41393-020-0424-8.
2. Nomi, M., Sengoku, A., Krogh, K., Emmanuel, A., & Christiansen, A. B. (2021). Validation of the Monitoring Efficacy of Neurogenic Bowel Treatment on Response (MENTOR) Tool in a Japanese Rehabilitation Setting. Journal of Clinical Medicine, 10(2), 263. https://doi.org/10.3390/jcm10020263
3. Dagmar, S., Slot, S., Mark, S., Baunwall, D., Emmanuel, A., Christensen, P., & Krogh, K. (2021). The Monitoring Efficacy of Neurogenic Bowel Dysfunction Treatment on Response ( MENTOR ) in a Non-Hospital Setting. Journal of Clinical Medicine, 1–9.